街のデバイス

浅草寺、雷門、仲見世、花やしき、大衆演劇場、落語、フットサル、ピンク映画、寅さん、ハリウッド、JRA場外馬券売り場、大衆居酒屋、ストリップ・・・・・
浅草は日本を代表する観光都市でありながら、“観光地”とひとことで括ることができないほどの雑多な要素であふれかえっており、他の観光地にはない独特の雰囲気をもっています。しかし観光客の多くは、このように浅草が雑多であることを観光ガイドブックなどから知ることはできず、したがって浅草寺のみにしか訪れることなく、そのような独特な雰囲気を味わうことなく帰ってしまいます。

「浅草寺だと思って歩いていたらJRA場外馬券売り場の前に立っていた」

観光客が浅草寺のみにしか訪れないのであれば、浅草寺の境内を浅草全体に拡大することによって、観光客を街に迷い込ませることができるのではないか。
私たちは浅草寺の境内に敷きつめられている玉砂利を浅草のすべての道に敷きつめ、灯篭、おみくじなどの要素を街のいたるところに配置します。浅草の街全体がまるで浅草寺の境内のようになることによって、観光客は浅草寺を訪れることによって浅草の街全体に迷い込み、また逆に浅草の街から浅草寺に迷い込み、観光ガイドブックなどには載っていない、しかし本当の浅草を体験できるのではないでしょうか。

(社)日本建築士連合会 平成13年度 懸賞設計競技 優秀賞