パノラマオフィス伊那

この共同オフィスは、2組の利用者が入居可能で、北側には同時期に建設された2棟の事務所併用住宅があります。これらの建物は、創業支援や地域振興の観点から計画された伊那市の公共建築です。設計にあたっては、入居者が敷地の南東に広がる塩見岳や仙丈ヶ岳といった山々に代表される「伊那市の環境」を積極的に感じられるように、また、その環境を活かす建物となるよう配慮しました。

平面計画では、L字型のレイアウトを採用し、L字の先端部分に外部へ大きく開いた事務室を配置しました。中央部分には緩衝スペースとして共用スペースを設けることで、各事務室の開放性とプライバシーを両立させています。外部環境に対しては、周囲に視線が抜けるよう開口部を慎重に配置し、建物の周囲に半屋外の土間スペースを巡らせることで、入居者の活動と伊那市の環境が有機的に結びつくよう工夫しました。

この建物は、伊那市の一般競争入札で受注した設計監理業務の成果です。伊那市の意向を踏まえつつも、行政的に平準化された事務所空間とは異なる提案を行いました。具体的には、構造と意匠を兼ねた現しの天井や大きなガラス欄間、家具の引手などに伊那市産のカラマツ材を積極的に使用しました。行政や工務店との対話を重ねる中で実現した建物です。

この共同オフィスは、地域の魅力を最大限に活かしながら、利用者にとって快適で機能的な空間を提供することを目指しています。今後も、地域と共に成長し、利用者の活動を支える拠点となることを期待しています。

※前職での担当物件

※※建築の総合情報サイトarchitecturephoto.netにて紹介していただきました。